AJSA 2009 全日本アマ選手権<決勝>ダイジェスト@X-DOME 1/2

AJSA 2009 全日本アマ選手権<デモ&表彰式>@X-DOME 2/2






11月21・22日の2日間に渡り、2009年度のAJSAアマチュアチャンピオン決定戦が「OAKLEY・BIG DAY OUT」の協賛にて、神奈川県海老名市のX-DOMEにて行われた。

このチャンピオン決定戦は、東北・関東・中部・関西・九州沖縄の五地区で、各3戦ずつ開催されたサーキット戦の獲得合計ポイントが16位以内の選手のみが出場資格を得られるレベルの高い試合だ。

ルールは各段階で1分2トライ、五人ジャッジで上下の得点を省いた3人の合計によりポイントが決まる。

高ポイントを得るためには1分という短い時間内で、より難易度の高いトリックを効率良く叩き込む必要がある。

つまり、ルーティン・スピード・テクニックは当然の課題となり、それに加えてこういったハイレベルな試合でより優位になるには、オリジナリティやパフォーマンス性も考慮すべきだろう。

しかし、難易度を狙い過ぎてしまうと、たった一回のミスが致命傷となって結果を大きく左右することもあり、このあたりを各々がどう作戦を練ってくるかがこのルールの見どころだ。

また経験の少ない選手の中には、気持ちばかりが先行してしまって殆どメイクできずに時間を使いきってしまい、実力を出せずに終わってしまう者が多いのもこのルールの特徴だ。

そういった意味では選手にとって最大の難敵は自分といえよう。

この2日間を仕切るMCはテンポの良いトークと的確なトリック解説でお馴染みの本間(インスタント)、選手・スタッフ共に信頼の厚い名MCだ。

ジャッジには富田・山西・亀岡・今野・後藤、いずれも経験豊富なベテランスケーターで、各地区のプロを目指すアマチュアライダー達との交流も深い。

この試合には全国各地から総勢50名がエントリー、どの選手も各地区で名を馳せた実力者とあって、それぞれが個性的なスタイルや完成度の高いトリックを有し、予選の段階から見応え充分の場面が何度もあった。



本来ならばこういったレポートでは入賞選手のみをお伝えするのが通例だが、体の故障を抱えての出場や調整不足などで残念ながら予選落ちとなってしまった選手の中でも、個人的に強く印象に残った選手が何名かいたのでお伝えしよう。

海老原 星七(九州8位・B.S.T.S.)

距離の長いノーズグラインドやノーズマニュアルなど、試合で使うにはリスクの高いトリックを何度もメイク、難易度という点では決勝進出者に比肩する滑りだった。

練習中にデッキを破損して、友人のデッキを借りての出場や流れ弾の被弾など、不運に見舞われなければもっと良い結果が出せたはずだ。

西田 純也(関西1位・B7 EAST SHOP)

常に全身イエローを纏った姿で毎回登場の「バナナマン」、中部地区のチャンピオン。

とにかくタフ、練習中に何度も見せたハードスラムのダメージを微塵も感じさせない活きのいい動きとスケールの大きさでコースを疾走、ビッグバンクからのオーリートランスファーはプロのデモとしても通用しそうな迫力だった。



寒河江 洋介(東北15位・アクションパーク米沢)

タイトな部分でのリーンtoテールなどアールトリックの強い選手、こちらも一発にかけるトリックの難易度は高かった。メイク数が伸びず予選敗退となったが、もう一度見たいと思わせる独創的なセクションの使い方は素晴らしかった。

末谷 惣一(東北3位・JOCKS)

東北地区では何度も入賞を果たすベテランスケーター。高さとキレのあるオーリーからのトリックが印象的で今回も活躍が期待されたが、調整が整わなかったようで実力を出し切れなかったのが残念。


こういった素晴らしい素質を持つ選手達が予選で敗退してしまう理由の大半が、自らのミスでメイク数が伸びなかったのが原因だったようだ。

プロ戦において、ベテランスケーターの間でよく使われる言葉で「予選の滑り」というのがある。これは高ポイントを狙うよりも自身が手堅いと思われるトリックチョイスで確実なポイントを加算し、予選突破を考慮した滑りの事だ。予選というのは突破するのが目的であって、別に1位を狙う必要はない。段階ごとに滑りの質を変え、周囲のレベルに合わせてスタミナ調整していくスキルも、こういったレベルの高い試合では必要になってくるということを認識できるようになれば、もっと実力の反映できる展開になっていくだろう。

準決勝には各地区で10位以内の成績を収めた実力者が揃った。



長崎 寛(関西2位・ムラサキ岡山)

アールを中心にしたグラブトリックが魅力。他の選手とはカラーの異なるルーティンで個性を発揮、ビッグクォーターからタイトなアールへのハンドプラントトランスファーは高ポイント。スリッピーな路面を考慮し、ややソフトなウィールをセットしてランディング力をアップ、メイク率を上げていたようだ。こういったコースに合わせたセッティング能力を身につけるのも、高ポイントへのコツと言えよう。

有馬 昴希(関東7位・ダブルフェイス)

実力派小学生がひしめく関東地区で、そのスピード感から一際目立つ存在のスケーター。今回は足首を負傷しての出場で持ち前の実力を発揮できなかったようだが、それでもこの成績は立派。

 

小林 紗輝(関東4位・ダブルフェイス)

こちらも有馬昴希と同じ地元・横須賀からのエントリー。クセのないスムースな動きとバランスの良いルーティンが魅力の小学生。まだまだ伸び盛り、来年度以降の更なる活躍が期待できる。

佐川 涼(関東9位・50-50)

こちらも関東地区からエントリーの小学生。安定したフォームと高いランディング能力で抜群のメイク率を持つ。決勝へ駒を進めることができなかったが、内容的にはとても良いものがあった。

川村 祐樹(関西7位・スポーツタカハシ)

予選・準決勝共にミスが目立ったが、それでもキレのある動きからのトリックは高評価、さらなる好成績を残すには、セクションと相性のいいトリックチョイスと1分を滑り切る持久力が欲しいところ。

岩倉 エリキ(中部1位・アクションブルーチップ)

テクニカルなカーブやフリップトリックが魅力の中部地区の覇者。今回もそのトリッキーな動きが期待されたが、X-DOMEのハイスピード仕様のセクションとは相性が合わなかったようで、その実力を見ることができなかった。

ツボにはまれば小学生では太刀打ちできないようなトリックを有する選手だけに、ここでの敗退は非常に残念。

色々なパークへの適応力が上がればここで終わるような選手ではないだろう。

富重 良太(九州2位・OUT-SIDE SPORTS)

九州地区では常に決勝進出を果たしていた選手。長い手足から繰り出されるトリックは見栄えが良く、高さも充分あったのだが、こちらもやはりメイク率が伸びずにここで敗退。遠距離からのエントリーで充分な調整ができなかったように見えた。

さて、いよいよ決勝。

さすがと言える顔ぶれが揃う。

ここで試合ルールである、先に行われたジュニア・キッズ・レディースの各優勝者が、この決勝戦にエントリーする資格が与えられ、ジュニアからは佐川海斗(50-50)、キッズから岸海(ムラサキ八王子)、レディースから中野若葉(トリックスター)が出場となった。

(※佐川海斗は本戦で決勝進出済み)

MC本間のリズムの良いトークとハードな選曲、そしてギャラリーの熱い声援で選手のテンションも上がり、王座決定戦にふさわしいスーパートリックが次々と決まっていた。

10位には田中達也(九州沖縄1位・ムラサキ博多)

カーブ・レール・フリップと、ストリートで現在主流となっているトリックが得意な選手。

どのトリックも完成度が高く評価も良かったのだが、トータルのメイク数が伸びなかったのが残念。

決勝では怪我かスタミナ切れのようで思うような滑りができてないように見えたが、ストリート的なトリックでここまで勝ち上がってきたのは見事。




9位、中野若葉(レディース優勝・トリックスター)

当然ながら紅一点、しかも相手は全国の強豪であるこの舞台で、アマチュアチャンピオン戦にふさわしい堂々の滑りを披露、あらゆるセクションを満遍なく使ったルーティンが素晴らしかった。

筆者は過去のレディース戦を何度も見てきているが、歴代の覇者と比べるに総合力という点で彼女は間違いなくトップ。




8位、岸海(キッズ代表・ムラサキ八王子)

関東地区のコンペテイターではもはや知らぬ者無しとなった弱冠小学3年生。

フリップとアールでのリップトリックが得意で、この年代にしてはかなりのトリック数を有するトリックマスターだ。

メイク率もなかなか良いのだが、このレベルの試合ともなるとさすがに年上ライダーの勢いに圧倒されてしまう部分が多く、本来のペースを維持するには少々相手が悪かったようだ。

本人はかなり悔しがっていたようだが、まだまだ先があるので焦ることはない。




7位、内藤寛人(関東9位・カスタム)

ルーティン・トリック共にバランス良く考えられていても良く、試合のお手本のようなスケートをする選手だが、バランスが良すぎてしまって「コレ!」といった特徴が感じられないところが難点。

変な言い方になってしまうが、「特徴が無いのが特徴」といったところだ。

絶対評価としては「上手い」のだが、相対評価としては「薄い印象」となってしまい、個性の際立った決勝組の中では折角の巧さも霞んでしまったようだ。

急いで次から次へとトリックを重ねると、どうしても個々のトリックの質が低くなってしまう。

それよりもアピール力を高めるためトリックの質を高める工夫ができるようになれば、さらなる好成績が期待できるだろう。




6位、石丸慧祐(九州10位・mo3 store)

九州10位とあるが、地元は神奈川、試合会場であるX-DOMEのローカルスケーター。

夏に重傷を負った足首がまだ8割程度の回復のようで、使えるトリックに制限があっての出場だが、それでも他の選手とは一線を画す高さのあるトリックは見応えがあった。

AJSAプロの浦友和や立本和樹からも才能を認められサポートを受けているあたり、これからメジャーシーンへの活躍が期待できる選手の一人である。

Q:スポンサー

A:mo3 store・SUPRA・EAST PACK・EXPERTIES・X-DOME・RANDOM HEROS

Q:感謝してる人は?

A:モッサン・寺井健人・浦友和・立本和樹

Q:スケートするにあたり、何か食事には気をつかってる?

A:いや、特に・・・あ、野菜は食べないですね。

Q:野菜嫌い?

A:まあそんなところ。

Q:ライバルは?

A:寺井健人・杉本瑛生

Q:ゲットしたいスポンサーは?

A:INDEPENDENT・KREW

Q:来年トライしたいことは?

A:海外で滑りたい




5位、米山漱(東北4位・Deathmix store)

東北地区の若手を代表しての参戦、バートからストリートまでこなすオールラウンダー。

特にエアーの高さと安定感が抜群で、練習中から殆どミスをしない完成度はまさに得意技といったところだろう。

1本目に一発でメイクしたビッグクォーターでの大技、BS KICKFLIP INDYを何故2本目でこだわってしまったかが大変悔やまれる。

熱くなってしまうのはスケーターなら誰しもあることなので仕方ないが、こういったタイトル戦では冷静さも大事。

年々着実に実力をつけてきているので、来年は持ち技にさらに磨きを入れて、是非優勝を狙って欲しい。




4位、桑本透伍(関東3位・ムラサキX-DOME)

名実共にAJSAトップクラスのアマチュアライダー、もともと得意だったエアトリックに加えて、今試合では様々なフリップトリックを披露、さらにレベルアップした滑りはローカルパークというメリットも手伝い、大きな声援を受けていた。

去年からの一年、どうやらいろいろな経験を積んでの参戦となったようだ。

実力的には優勝候補の大本命とされていたが、決勝では痛恨のミスに見舞われ、全メイクで滑り切った上位のポイントに僅かに届かなかった。

まだまだ中学1年生、これからの成長が楽しみだ。

Q:スポンサー

A:NESTA・X-DOME・EAST PACK・RANDOM HEROS

Q:感謝してる人は?

A:両親・浜瀬海・西川誠・寺井健人・米坂淳之介・友達みんな

Q:女の子で上手いなと思うスケーターは?

A:中野若葉・伊佐風子

Q:ライバルは?

A:自分

Q:キレたら怖い人は?

A:キングスラー・西川誠・浦友和・立本和樹・米坂淳之介

Q:ゲットしたいスポンサー

A:BLIND・CG(HEADPHONE)・THUNDER TRUCK




3位、西川誠(関東5位・アドバンス)

こちらも石丸慧祐と同様、夏場の足の怪我から復活でなんとか調整が間に合ったものの、本調子とまではいかずのエントリーとなった。

DOME番長の異名をもつ彼、今回の練習時間でも多くのライダーにチェックされていたようだ。

中学生としては恵まれた体力と環境で、スペック・経験値的にはプロのそれと大差ないものがあるように感じる。

彼もまたアマチュアトップランカーだ。

もともとは「アーラー」の異名をとる程にアールが得意な選手だったのだが、今試合ではそういったイメージは影を潜め、よりストリート色の強いスケーティングを狙っていた。

残念ながら彼もまた細かいワンミスによりポイント加算が止まり、3位という結果になってしまった。

ジャッジ陣からは、「あとワントリックが・・・」という程に上位の2人とは切迫したポイントだっただけに、そのストリート色へのこだわりが無ければもっと彼にとって楽な展開になっていただろう。

Q:スポンサー

A:RVCA・AUTOBHAN・SABRE・X-DOME・湘南GRIP

Q:感謝している人

A:キングスラー・後藤大輔・傳田郁

Q:ライバル

A:杉本瑛生

Q:憧れのスケーター

A:丸山慎太郎・砂川元気・ダレン ナバレッティー・エイドリアン マロリー

Q:行ってみたい所は?

A:サンフランシスコ・オレゴン




2位、井狩太海(関西7位・ムラサキ船橋)

関西7位とあるが現住所は千葉。

小学生にしては珍しく、トリック数を増やすことよりもスタイリッシュさを追求するライダー、

試合中でも体の捻りや倒し、デッキの差し具合などを意識した動きが多く、このあたりはベテランスケーターに人気があった。

物静かな出で立ちとは裏腹にとても負けん気が強く、その気持ちが強くなるほど実力が発揮されるようだ。

もし最後のバンクオーリーからタイトアールへのオーリートランスファーが時間内に決まっていれば、金メダルは彼の手に渡っていただろう。

Q:スポンサー

A:ムラサキスポーツ・FLAKE・セキノレーシング

Q:今日の試合の感想は?

A:嬉しかったけど1位になりたかった。

Q:よく滑ってる場所は?

A:千葉県・塩浜パーク

Q:ライバル

A:佐川海斗・佐川涼・杉原貫太・岸海

Q:尊敬してる人

A:クリスチャン ホソイ

Q:スケート以外で続けている事ってある?

A:ピアノを5年(スケートは4年)

Q:欲しいスポンサー

A:VANS






そして優勝は佐川海斗・(関東1位・50-50)

激戦の関東地区を勝ち抜いた実力はここでも存分に発揮、ほぼ全てのセクションにライバルと同等以上のトリックを叩き込み、2位の井狩太海と僅か7ポイント差ながらもこの試合を制した。

彼の最も優れた部分はルーティンの繋ぎの良さで、無駄の少ない効果的な構成と緩急取り混ぜた見栄えの良さが高評価だった。

小学生ながらもルールを知り尽くしたその完成された滑りは、ジャッジ全員が認める優勝の滑りだった。

Q:スポンサー

A:FLAKE

Q:この優勝を誰に伝えたい?

A:学校の友達

Q:感謝してる人

A:両親・FLAKEの笠松さん・X-DOMEの小泉さん・カレーさん・ゴトーさん・キングスラー

Q:憧れているスケーター

A:上田豪の熱いところ・立本和樹のスイッチ

Q:試合前になにか工夫していることはある?

A:板チョコを食べると調子いい

Q:ゲットしたいスポンサー

A:ボーンズ・エトニーズ・クリーチャー・インディ













また試合終了後にOAKLYのライダーによるデモが行われた。

ライダーは米坂淳之介・森本泰斗・飯田修平・瀬尻凌

 

 

こちらはやはりプロ、試合では見られなかったスーパートリックの連続で、アマチュアの選手達にとっては刺激のある素晴らしい内容だったのではないだろうか。



同日に行われた、レディースクラス・ジュニア・キッズクラスのレポートはもう少しお待ちください。



テキスト/後藤大輔   写真/平沼孝之・立本和樹・後藤大輔



最終日のジャッジ。左から中部サーキット山西英二。AJSA今野陽介プロ。チーフジャッジの5050
富田カレーAJSA競技部。関東サーキット亀岡祐一。九州沖縄サーキット立本和樹の5名。


左から3位の西川誠、2位の井狩太海、プレゼンテーター米坂淳之介AJSA公認プロ、優勝の佐川海斗。




左から3位の庄司七海、2位の伊佐風子、優勝の中野若葉、プレゼンテーター飯田修平プロ。




左から優勝の岸海、3位の傳田郁、2位の白井空良、プレゼンテーター瀬尻稜AJSA公認プロ。




左から3位の小林紗輝、2位の岸海、優勝の佐川海斗、プレゼンテーター森本泰斗AJSA公認プロ。


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