今回は、静岡県浜松市花川町にある、花川スケートパークで行われた2009年度AJSA PRO TOUR第二戦「e’s Street Style Challenge」の模様をお伝えする。

この花川スケートパークは滑走面全てを特殊合板でフル加工してあり、地面とセクションの段差はもちろん、合板同士の継ぎ目さえ全く気にならない程の滑らかな仕上がりを施してあり、セクションサイズも全体的にかなり小さめ、第一戦が行われた鵠沼パークのハードなコースとは対極的なカラーを持つパークである。

つまり「転んでも怪我をしにくいパーク」なのだ。

したがってレベルの高いトリックを存分にトライすることができ、セクションも小さいためにスピードもさほど必要とせず、他のライダーと差をつけるためには、どれだけテクニカルで高密度なトリック構成を組めるかが、試合結果を左右する一つの目安となりそうだ。



会場はインドアで、この時期の蒸し暑さやギャラリーの多さと相まって熱気はピーク、日頃からこういった暑さの中でのスケートに慣れてるライダーにとっては問題ないだろうが、逆に涼しい夜間などの時間帯しか滑ることのできない者や、まだまだ気候の穏やかな東北地区からのエントリー者にとってはこの蒸し暑さこそが最大の難敵であったように見える。

こういった条件の中、エントリーしてきたプロライダーは総勢35名、パークの構成を反映してかテクニカルなトリックを得意とするライダーの名前が多かったようだ。

予選ではそういったライダーが順当にポイントを獲得したが、そこはやはりプロクラス、ちょっとしたミスやルーティンワークで順位は大きく変動し、なんと予選では12位から20位までが10pt差という非常にシビアな展開となった。

予選通過者は16位までなので、このあたりの点差はジャッジとしても非常に難しかったが、全体的な評価の流れとしてはトリックの手数よりも難易度の高いトリックをきめていたライダーが、好印象を得て僅差で決勝に駒を進めていたように見える。

やはりセクションが比較的イージー設定なため、無難なトリックに対しての評価は通常よりも低かったようだ。

惜しくも予選通過には至らなかったが、寺井健人(TASK SURFBOARD)のほぼ全てのセクションを無駄なく使った圧倒的なトリック数や、池ノ上慶太(インスタント)の他のライダーと一線を画す絶妙なトリックチョイスなどは独創的でとても好印象であった。

また上田豪(カスタム)は自身にとっては不得意なパークだったようで、得点こそ重ねるには至らなかったものの、ウォール最上段からのドロップなどの持ち前のバイタリティ溢れるパフォーマンスでギャラリーの記憶には鮮明に焼きついたことであろう。

決勝に残ったライダーはそれぞれの個性を発揮した素晴らしいライディングであったが、その中でも特筆すべきアクションを披露してくれたのは、浦友和(DC Shoes JAPAN)のスピン入りのコンビネーショントリックの応酬や立本和樹(ムラサキスポーツ)のスムーズな流れのスイッチトリック、中坂優太(花川スケートパーク)の完成度の高いフリップ系トリックなどを挙げさせていただく。

さて、いよいよ決勝。

練習時間からかなりシビアな駆け引きが始まっているように見えた。

こういった花川のようにラインの少ないパークでの練習は、慢性的なスネーク状態となるため、思うようなタイミングでラインを作ることができず調子を整えるのが困難なのはもちろん、運が悪ければライダー同士の激突でダメージを負ってしまう事態にもなりかねない。

加えてこの暑さ、ただ座っているだけでも汗が滲んでくるような中で勝負を懸けたスケートをするというのは、想像以上の体力と精神力が要求されることだろう。

このような状態ともなると、もはやサバイバルである。

この大混戦の中、冷静に状況を把握していたライダーは、大技のラインを狙うのは不利との判断か、ゆっくりとしたスピードで細かなトリックを黙々と練習し調子を整えていた。

実際、メイク率は別として、このスネークランの中で最もラインを獲得していたのはそういったタイプのライダー達であったことから、こういった練習時間の的確な判断も結果を左右する一つの要因となるようだ。

こういった厳しい状況で始まった決勝だが、やはり練習不足やスタミナ不足などでミスを連発するライダーが続出。

内英二(ハヤシトレーディング)・今野洋介(ムラサキスポーツ)・立石和(ムラサキ熊本)・井波来夢(B7EASTSHOP)・中坂優太(花川スケートパーク)らは、単発ではさすがプロといった素晴らしいトリックを見せてくれたが、全体的なメイク率が低く得点を稼ぐことができなかった。

予選では2位・3位と順調な出だしだった才哲治・立本和樹 (共にムラサキスポーツ)は、決勝では大技が決まらずに10・11位と大きく順位を下げてしまった。

しかし、彼らの状況に応じたトリックの豊富さは素晴らしく、パークごとに様々なトリックを披露してくれるので、試合結果とは別にこういった部分もプロ戦の見どころとしてギャラリーの皆様には注目して頂きたい。

ルーキーの松木愛瑠(DEATH MIX)はここでも得意技をしっかりとメイクして勝負強さを発揮して予選と同じく9位、自分のスケートをこなすという点ではベストを尽くせたのではないだろうか。

これからさらに得意なトリックに磨きをかけ、スタイルにこだわりが持てるようになってくれば、上位陣を脅かす存在になっていきそうだ。

6・7・8位には謝花明徳(カスタム)・杉本瑛生(セキノレーシング)・浦友和(DC Shoes JAPAN)がそれぞれランクインしたが、いずれも過去のビッグコンテストでの優勝経験者、今回も練習時間中には何度もいい技が決まっていて期待されていたが、本番ではそれが決まらず、残念な結果となってしまった。

5位は大竹宏二(Sonik Distribution)、カーブ・レールを得意とするライダー。

持ち前の安定したオーリーから繰り出すロングディスタンスのスライド・グラインドトリックはとても完成度が高く見応え充分であったが、その部分にこだわるあまり他のセクションをスタート台としか使うことができず、トリック数が少なかったようだ。

4位、阿部涼太(Sonik Distribution)、こちらも6位の大竹宏二と地元を同じくする宮城県からのエントリー、やはりカーブやレール系のトリックを中心にルーティンを作ってきたので中央のセクションにトリックが集中、勝負という点では構成にやや難を感じた。

もともとオールラウンドにこなせる実力は備えているので、こういったコンテスト時には、自分の滑りではなく試合の滑りという気持ちで臨むことができれば、より良い結果が出せそうだ。

3位、米坂淳之介(Sonik Distribution)、もはや言わずと知れた日本を代表するトッププロスケーター。

前回の鵠沼戦に続き、今回も堂々の表彰圏内にランクイン。

パークへの適応能力はさすがベテランといったところで、スピード調節が難しく単調なリズムになりがちな花川パークを、緩急のある安定したラインで見事に滑り切った。

しかし、予選・決勝共に45秒を過ぎたあたりから動きがやや鈍ってくるように見えたのが、やや気になるところだが・・・。

2位、中島アンデルソン(花川スケートパーク)、昨年までの中部地区サーキットでは常に上位の成績を収め、デビュー1年目として参戦したこの試合で、トッププロを抑え込んで見事メダルをゲット!

地元出場とあって応援団の声援に押され調子が上がったのか、カーブ・レール・フリップ・スピンと絶妙なコンビネーションでルーティンを繋ぎ、ルーキーとは思えない意外性に富んだ滑りを披露してくれた。

キックターンやストールなどを極力減らしたルーティンが組めるようになれば、さらなる高得点が望めるだろう。

そして優勝は瀬尻凌(ムラサキスポーツ)、今回の主催である「e’s」のライダーでもある彼は練習時間から抜群の集中力とメイク率を発揮、本番でもレールやボックスを中心にバランス良く各セクションを滑り抜け、妥協のない難易度とテンポの良いリズムを見事に組み合わせたルーティンを、オールメイクという快挙を遂げた。

ジャッジ全員がさしたる話し合いもなく認めたまさに「1本勝ち」の優勝である。






文章/DAISUKE GOTO

写真/LURICO DENDA・DAISUKE GOTO



<< 写真&観戦リポート準備中 >>