9月2日にAJSA2018プロツアーの第3戦H.L.N.A CUPが静岡県にある
東静岡アート&スポーツヒロバにて開催された。
昨年5月にオープンしてから、数々のビッグイベントが開催されている国内屈指の屋内施設だ。
AJSAのプロツアーとしても昨年に引き続き2回目の開催となる。




今回ジャッジ陣を務めるのは左から塩谷氏、亀岡氏、富田氏、山西氏の常連の顔ぶれに地元静岡を代表する中坂氏の5名。一番高い点数と低い点数がカットされる5審3採制と、予選・決勝ともに1分間2トライでベストスコアを採用という方式は今までの変わらない。
MCもAJSAプロツアーではおなじみの本間氏。そこにタイムキーパーとして地元静岡からイベントを盛り上げるbanbiの運営陣でコンテストはスタート。







そして総エントリーは21名。人数だけを見ると第1戦のAdvance Cup、第2戦のASIAN OPENよりも少ない数字ではあるが、それはAdvance Cupにはメーカー推薦枠やベストトリックコンテストがあったり、ASIAN OPENには5か国間のライダーに出場権があったという背景があったからであり、決してコンテストの質が落ちるというわけではない。逆に言えば、AJSAプロ資格を持つ者しか出ることができない、少数精鋭の非常にレベルの高いコンテストと言うことができる。






そのためコンテストは予選からハイレベルなトリックのオンパレード。
決勝進出者は12名とエントリーライダーの半数以上を占めてはいるが、世界からも注目を浴びてきている日本の10代のライダーの中心層で構成されているため、少しでも気を抜いたら予選落ちということも十分に考えられる。そんな中トップ通過を果たしたのは池田大亮。言うまでもなくここ数年の日本のコンテストシーンを牽引している彼は、もはや国内では完全に追われる立場。それでも難なくノーミスで滑りきり貫禄のトップ通過を果たした。










予選で飛び出た根岸空のハードフリップ B/S 50-50グラインド。決勝では惜しくもメイクならず。





予選からガゼルフリップをパーフェクトメイクした池田大亮

続いての決勝は、今回も非常にドラマチックな展開となった。
戦前の予想では国内では王者として君臨する池田大亮や昨年のAJSA年間チャンピオン佐川涼に対し、地元静岡が誇る2枚看板の青木勇貴斗、根附海龍がどう食い込むかといったところだったが、
今回は1本目で根附海龍が会心のランを披露。
もはや彼のレベルからしたらハンドレールでのヒールフリップ F/Sボードスライドなどはメイクして当たり前。決勝ではそれらに加え、予選でも練習でもトライすらしていなかったヒールフリップ B/Sリップスライドを織り込んできて、いきなりの一発メイク。これには普段は冷静な彼でさえもメイクの瞬間には安堵の表情を浮かべていた。この攻めに出たライディングが功を奏し、後に続くライダーに無言のプレッシャーを与えることに成功した。
そして、その影響をもろに受けてしまったのが池田大亮。トップ通過を果たしている彼はこの想像以上のランを見た時に鳥肌がたったと話していたほどで、必要以上に固くなってしまったのだろう。予選では完璧にメイクしていたガゼルフリップをミスしてしまう。
彼ほどの経験とスキルを持っていたとしても、平常心を保つのが難しくなるほど今の日本の10代若手ライダーの底上げは凄まじいということだろう。
ただし、この会心のランを見たらもう一人の地元代表である青木勇貴斗も黙ってはいない。すでに標準装備であるトレフリップからのF/Sリップスライドはハンドレールでさらっとメイク。さらにバンクからの乗り上がりノーリーインワードヒールや、バンク to バンクでのビガースピンフリップなど高難度な回しトリックを織り交ぜながらもノーミスでランを終了。
池田大亮もノーミスで滑走を終えたのだが、1本目のガゼルフリップのミスが響いたのかそこをトレフリップで収めて無難なランで締めたことが結果にどう影響するのか!?
そこが優勝の今回の優勝の争点となっていた。



8位 / 佐々木音憧  F/Sノーズブラントスライド



7位 / 渡辺雄斗 トランスファー F/Sノーズグラインド ミドルポップアウト



6位 / 小鈴大和 F/Sボンレスエアー



5位 / 山下京之助 B/Sリップスライド



4位 / 佐川 涼 F/Sノーズブラントスライド



しかし、そんな白熱の戦いも結果は池田大亮が2位に13点差をつけて優勝という”いつもの”結果となった。もはや現在の彼からすると、この”いつもの”という表現が一番ふさわしいだろう。
ここ最近の彼のランを見ていると、披露しているトリックのレベルが高いのにも関わらず点数が伸びないと感じていることがあったそうで、ナーバスになってしまう側面もあったという。
ただジャッジ陣も彼の滑りは幼少期から何度も見ているため、良い意味ですでにどんなトリックが出てくるのか予想がついてしまい、いくらハイレベルなトリックを披露しても印象という意味でフレッシュさが薄れてしまったのかもしれない。
今回の出場ライダーの中では、彼の経験値や実績は間違いなくNo.1である。それであるがゆえ、ジャッジやオーディエンスも彼には今までの想像を超える圧倒的な滑りを期待しているのかもしれない。
もはやいつもの国内コンテストではただ優勝するだけでは意味がない。そこまでのレベルに到達しているのが今の池田大亮の現在地なのだろう。



3位 / 青木勇貴斗 トレフリップ F/Sリップスライド



2位 / 根附 海龍 B/Sヒールフリップインディーグラブトランスファー



1位 / 池田大亮 F/Sキックフリップ



トレフリップ F/Sリップスライド













Photo & Text By 吉田佳央 (yoshioyoshida.net