一年の総決算 プロツアーの最終戦



今年も12月2日にAJSAプロツアーの最終戦、ムラサキカップが数々のビッグコンペティションが行なわれているMURASAKI PARK TOKYOにて開催された。
例年通りならば、すでにこの時期は全スケジュールを消化しているのだが、本来の開催予定日であった9月30日に台風24号が直撃したことにより、この日に順延されることとなった。
そのような背景もあってか、この日のエントリーは22名と、人数だけ見れば少ないように感じるかもしれないが、前回のH.L.N.A CUPと同様にこのムラサキカップもAJSAプロ資格を持つ者しか出場資格がなく、本気で優勝を狙いに行く者だけが集まる少数精鋭の非常にレベルの高いコンテストだということができる。







さらに言うならば、今年は第3戦目が終了した時点で2勝している池田大亮の年間王者は決定しており、その後は皆さんもご存知の通り、彼は世界最高峰のアマチュアスケーターの祭典であるTAMPA AMでも勝利。オリンピック効果から民放テレビ局も取材に訪れる今回は、大手メディアからすれば彼の凱旋コンテスト、他の参加ライダーからすれば来年SLSに参戦する彼に勝つ機会は、ひょっとしたら訪れないかもしれない。そう言ったことがモチベーションになっていたのではないだろうか。






大きな波乱もなく順当な予選

そのような状況下でコンテストはスタート。今回のジャッジ陣は関西から塩谷氏、中部から山西氏、ヘッドジャッジの富田氏に関東から亀岡氏と秋山氏の5名。MCはおなじみの本間氏という面子。
プロ戦ともなれば、予選であってもあってコンテスト慣れしているライダーばかり。自分のこなすルーティーンは本番前にきっちりと決めておき、直前練習は流れの確認のみ。中には決勝用にキラートリックを隠している者もいたりと言った内容はずっと変わらないが、近年のコンテストのレベルは数年前と比べても明らかに高くなっており、決勝進出の分かれ目はどれだけミスを減らせるかにかかっている。それでも池田大亮は1本目こそミスが目立ったものの2本目はノーミスで滑り終え、貫禄の2位通過。1位通過はTAMPA AMでのケガからの復帰戦となった白井空良、3位は同じくTAMPA AM池田大亮とともに決勝に残った青木勇貴斗となった。他にも昨年の覇者である佐川涼も5位で決勝進出を果たすなど、予選は概ね順当な結果となった。







出走前の池田大亮


白熱の決勝。勝者は貫禄の……

続いては決勝。内容の方は言うまでもなくハンマートリックのオンパレード。ここからは各ライダーのライディングカットとともにどうぞ。




12位は小鈴大和。彼のスタイルは一言で言うと猪突猛進。そして結果は三振かホームランと言ったところか。優勝よりもどれだけ一発で魅せるかを意識したランを見せてくれた。オーディエンスは大いに盛り上がったことだろう。このマニュアルパッドをオーリーで全越えしたのも彼ただ一人。




11位は関西よりエントリーの浅井艶照。手堅い滑りで決勝進出を果たし、決勝でもこのF/Sフィーブルグラインドをサラッとメイクするなどそつのない滑りをこなしていた。




予選では5位通過だった佐川涼は決勝では10位に。狙ったトリックを抑えきれずに順位を伸ばすことができなった。それでも得意技ハードフリップからのF/Sボードスライドなど、進化の片鱗は見せていた。来年以降の活躍に期待したい。




9位には初の決勝進出となった静岡の澤嶋裕貴。ルーティーンの最初に取り入れたこの飛び出しバンクからのF/Sスミスグラインドも余裕のメイク。同じ静岡の同世代、根附海龍や青木勇貴斗らとこれからも地元シーンを盛り上げていってくれることだろう。




8位には今年のルーキープロ、佐々木真那が輝いた。中学生とはとても思えない大人びたルックスとライディングスタイルで、得意のハードフリップ以外にこのF/Sハリケーングラインドもサクッとメイクしてみせた。




7位は近年のコンテストでは上位進出の常連となっている渡辺雄斗。このB/S540ノーズグラブのように、高難度なトリックを淡々と多くこなし、いつも表彰台を狙える位置にはつけるもの優勝にはまだ縁がない。来年以降のさらなる成長に期待したいライダーの一人だ。




6位には大会最年少、小学校6年生の渡辺星那が輝いた。7位の渡辺雄斗の実弟で同世代では飛び抜けたスキルを持つライダーの一人。このB/Sリップスライドのメイクも朝飯前。来年から晴れて中学生となり、同い年で池田大亮を兄に持つ池田大輝や1学年上の飯田葉澄らもプロ戦に参戦してくるので、この世代の活躍も楽しみのひとつ。




5位にはここ最近出場すれば安定した成績を残している根附海龍。得意技のヒールフリップを活かしたトリックレパートリーは大きな武器。さらに複合系トリックが充実すれば来年は優勝を果たしてもおかしくない存在だ。これはベニハナのレイトショービットと言う渋いトリックチョイス。




4位はここ最近で背も伸びてきてグッと大人びできた山下京之助。このレールオーバーのF/Sフリップや全越えのハードフリップ、レールではビッグスピンF/Sボードスライド、ステアではスイッチF/S 360などをこなしていた。これからさらにスタイルが洗練され、パンチのあるトリックがルーティーンに組み込まれていきたら一躍優勝候補だろう。




3位はここ1,2年でグンと背も伸び、同時にスキルも急成長を遂げた青木勇貴斗。シグネチャートリックのトレフリップ F/Sリップスライドは全く外さず、ステアではスイッチビッグスピンヒールも余裕でメイク。悲願の初優勝に必要なのは、大事なところで優勝を決定づけるハンマートリックをメイクできるか否かにかかっていると言っても過言ではない。




2位は予選トップ通過だった白井空良。TAMPA AMで負ったケガの影響を全く感じさせない堂々とした滑りで僅差の2位となった。すでにAJSAはもちろん今年はDAMN AM JAPANも制すなど、優勝経験もある彼に必要なところは、安定感と適応力のみか。持てる力を十分に発揮すれば海外でに上位を狙うだけのスキルはすでに持っている。






そして今回も終わってみれば優勝したのは池田大亮だった。決勝も予選と同様1本目はミスが目立ったものの、2本目は彼の代名詞になりつつあるB/S270キックフリップボードスライドなどを含めノーミスで、ラストにはスイッチビッグスピンヒールをメイクするパーフェクトラン。思えば今年はTAMPA AMはセミファイナル6位から、ASIAN OPENも予選8位から決勝2本目で大逆転と、ここ一番での強さが光った一年となった。












年間チャンピオンも池田大亮がブッチギリ





この結果、今年は4戦中3戦を制した池田大亮が350ポイントを獲得し、2位の青木勇貴斗に150ポイントもの大差をつけて優勝。見事に王座を奪還した。今年から朝のランニングやジムでのトレーニングなどを開始し、肉体改造にも着手したことがこのような結果に繋がった。
そして来年はいよいよ世界最高峰のコンテスト、STREET LEAGUEが彼を待っている。数年前までは同じ舞台で戦っていた堀米雄斗とともに躍動する姿を見るのが、今から楽しみでならない。








Photo & Text By 吉田佳央 (yoshioyoshida.net