全日本アマ出場権をかけた笑いあり涙ありの最終決戦



会場となった新横浜公園スケートパーク

去る9月15日に2019年AJSA関東地区アマチュアサーキットの最終戦に当たる第3戦が、新横浜公園のスケートパークにて開催された。
会場である新横浜のスケートパーク、通称新横についてはもはや説明不要だろう。全国規模でも圧倒的な知名度を誇り、広々とした敷地はパークが2エリアに分かれて構成されているだけでなく、フラットスペースも十分すぎるほど確保されているので、コンテストを開催しても余りある収容力がある。しかもナイター付きで夜も無料で滑ることができ、高架下のパークエリアは多少の雨ならば防げるとあれば、常にスケーターたちで賑わっているというのも納得。その環境の良さも手伝ってかわざわざこの近くに引っ越すスケーターもいるほどだ。



総勢74名がエントリー



今回は参加特別賞として来年の東京オリンピック・パラリンピックのピンバッジが付いてくる



ジャッジ陣は左から亀岡、秋山、寺井、桑本、そして冨田という構成。MCは関東アマではお決まりの関口

そして今回は年間3戦行われる地区サーキットの最終戦であり、同時に一年の締めくくりとなる全日本アマチュア選手権の出場がかかった大一番でもある。プロ権利獲得の前に立ちはだかる最初の壁として多くのスケーターが振るいにかけられてしまう舞台というわけだ。

そんな状況の中、エントリーしてきたスケーターの数は74名と、初戦のうみかぜ公園ほどではないが多くのスケーターが集まった。中でも特筆すべき点はガールズが12名参加と10名以上の参加となったこと。これにより過去2戦を圧倒的強さで制した松田優衣の牙城を崩すスケーターが現れるのかどうかも非常に興味深いところ。



今年は関東地区サーキットの年間優勝最有力候補と目されていた澤田莉旺はまさかの予選敗退



予選トップ通過は前戦に続き長谷川絢之介。ノーミスの完璧なランを見せた

そうした緊張感の中で行われた予選は、やはり悲喜こもごもの結果となった。アマ戦の場合、絶対的なスケーターの数の多さから、どうしてもプロ戦よりもエントリー人数が多くなってしまうので、1日ですべてのスケジュールをこなすにはどうしても予選は1トライにせざるをえない。

この一戦でそのあおりをモロに受けてしまったライダーは澤田莉旺ではないだろうか。昨年もプロ昇格組のライダーと互角の戦いを繰り広げながらも、肝心なところで決めきれず涙を呑んだだけに、今年にかける勢いは相当なものであったことは容易に想像がつくが、前回はコンテスト直前でケガによる欠場、そして今回は練習でパーフェクトに乗っていたトリックが決めきれず、予選通過ラインにわずか届かない18位と、今年も結果を残すことができなかった。潜在能力の高さは関東エリアの誰もが認めるところなので、後は何事にも動じないメンタルの強さを身につけることが必要なのかもしれない。

そうした中、予選トップ通過となったのは前戦に引き続き長谷川絢之介。ノーミスのパーフェクトランは予選にしては文句のつけようがない出来だった。彼に関して言えば、初戦のうみかぜ公園では感動の初優勝、続く前回も予選はトップ通過と、このまま勢いに乗りそうなところだったが決勝で足元をすくわれ無念の7位。成功と失敗の両方を経験したことで、わずか半年足らずの期間ではあるが、劇的な成長を遂げたように思える。





決勝を前に多くのオーディエンスが行方を見守る



ガールズ3位は高橋月音。見事なバックサイドブラントスライドを披露



2位の小田切陽依。きっちりと流したバックサイドリップスライド



優勝の井上青空は、バンクtoバンクでのキックフリップも確実にメイク

続いて決勝の前に、まずはガールズから。今回も過去2回ともに優勝を果たしている松田優衣が優勝候補筆頭かと思われたが、エントリー数の多さや先にランを終えたライダーの技構成を気にしたのか、レールや回し系トリックを多用した難易度の高いルーティーンで勝負に出た結果、トリックを決めきれず7位に沈むと言う結果に。そして代わりに優勝を勝ち取ったのが井上青空。アールを中心としたトリック構成ながらも、難易度の高いコーピングトリックを披露し、バンクtoバンクでのキックフリップもメイクするなど、ライン組みとともに勝負強さも見せつけてくれた。




8位はFLAKEチームから福田大翔。キックフリップバックサイドディザスター



この日もアールtoバンクで様々なトリックが出たが、このトリックがNo.1だろう。7位鈴木琉佳によるバックサイド360メロングラブレイトショービット



6位の村上涼夏はプレッシャーフリップからのF/Sリップスライドを披露



ダブルキンクしたカーブボックスでのノーズマニュアル。5位の戸谷陽日



ノーズ側のトラックをかけてテール側のトラックを下げるこのグラインドは、4位内山朝陽のシグネチャートリックとも言える



決勝は惜しくも3位となってしまった長谷川絢之介。アーリーウープフロントサイド180ウォールライド



今年のFLAKEの顔がついに本領発揮。惜しくも2位だった松本浬璃のバックサイド270ボードスライド



念願の初優勝。犬川空汰のフロントサイドサラダグラインド



ルーティーンの最初に披露した挨拶代わりの一発。オーリーバックサイドグラブシフティー

続いての決勝は、一言で言うと大混戦。しかも現在の国内スケートスキルは数年前と比べてもレベルが劇的に上がっているため、アマ戦とはいえ優勝するにはノーミスがセオリー。各々の得意技で手堅くポイントを稼ぎつつ、決勝用にとっておいたトリックを織り交ぜて、リスクを負ってでも一か八かのトリックをメイクしなければ優勝はできない。

予選トップの長谷川絢之介は、1本目・2本目とも最後の1トリックまでは完璧なランだったにも関わらず、どちらもラスト1トリックでバックサイドビッグスピンボードスライドが乗りゴケに終わってしまい、あと一歩で優勝を逃し、3位に終わると言う結果に。

対して2位の松本浬璃は決勝のラストにとっておいたクォーターでのブラントからフロントサイドフリップアウトをランの2本目で見事にメイク。抜群の勝負強さを見せてくれた。

そして堂々の初優勝となったのは犬川空汰。ダウンレールでのキックフリップフロントサイドボードスライドなど回しインも標準装備で、全てのトリックをクリーンメイクしただけでなく、アールtoバンクのアール部分をステアに見立ててキックフリップで跳び越えるという、全ライダーの中で彼のみが見せたセクション使いも光った会心の勝利と言えるだろう。




ガールズの表彰台に上がった3名。左から小田切陽依、井上青空、高橋月音



メダルを受け取る井上青空



犬川空汰、優勝決定の瞬間



メダルを授与される犬川空汰



今大会8位以上の上位入賞者



表彰台に上がった3名。左から松本浬璃、犬川空汰、長谷川絢之介



最後はじゃんけん大会で大盛り上がり




こうして幕を閉じた今年のAJSA関東地区アマチュアサーキット。全日本アマへの出場権を獲得したライダーには、ぜひとも本場で大暴れしてもらいたい。昨年は1位と2位が関西勢だったので、今年は関東勢が層の厚さを見せつけることができるのか。はたまた伏兵が現れるのか、全国のアマチュアスケートボーダー達の一年の締めくくり。スケートボード版甲子園は10月末の開催となる。



Photo & Text By 吉田佳央 (yoshioyoshida.net











世代交代の過渡期。大混戦の関東アマ!



会場となったSKIP FACTORY


去る6月9日、SKIP FACTORYにてAJSA関東アマチュアサーキットの第2戦が開催された。
6月に2戦目が開催されるのは例年通りではあるが、この時期の日本は梅雨の真っ只中であるため、ここ数年はこの関東最大の屋内スケートパーク、日本のThe Berricsとも形容されるSKIP FACTORYで開催されている。




SKIP FACTORYは外からでも会場の様子ががわかるようにモニターがついている




受付の様子。今回は59人がエントリー



今回のジャッジ陣


今回のエントリーは合計で59名。前回のうみかぜ公園に比べると少なめではあるが、それでも決勝の常連組は皆コンディデョンを調整して臨んできた。しかし、ただ一人SKIP FACTORY近郊の埼玉県をホームとする澤田莉王が3日前の練習中に膝を負傷、直前で離脱が決定した。昨年も決勝進出の常連であり、なおかつ今回は滑り慣れたパークということで優勝候補の筆頭と目されていた彼の欠場は、今回の順位にかなり影響が出るのではないかと予想された。

コンテストでの勝敗はスキル以外の部分に左右されることもかるが、彼に関して言えばその典型例のように見えてならない。スキルが十分なことは周りのライダーも周知の事実であるだけに、”もっていない”という言い方が最もしっくりくるような気がする。




出場最年長47歳の大島勝利が見せた渾身のドロップ




ここ最近決勝進出の常連になりつつある坂本倭京のビッグスピンボードスライド




すでに決勝進出常連の大場蓮。大柄な体格から繰り出したバックサイドキックフリップ




彼にとって決勝進出はノルマなのかもしれない。今年のFLAKEチームを引っ張る松本浬璃。


今回の予選の顔ぶれを見ると最年少が7歳、最年長が47歳とその差は実に40歳。最年長となった大島勝利が最後にAJSAに出場したのはおよそ20年前とのこと。そのため彼の出場がする意味は今をときめく10代ライダーとは全く違う。最後に見せてくれたドロップは頭を打つ鬼スラムだったにもかかわらず拍手喝采を浴びていたし、果敢なトライからは何歳になっても何かに挑戦する気持ちを大事にしたいという本人の強い意志が感じられた。ある種のエンタテイナーの役割を果たしてくれたし、オーディエンスにスケートボードは何歳になってもできるものであることも示してくれた。10月末に開催される全日本アマチュア選手権のマスターズクラスへの出場の大いに期待したいところ。


では予選の結果だが、ここでは前回の覇者である長谷川絢之介が250点と2位に20点以上の大差をつけてブッチギリのトップで決勝へ駒を進めた。他の結果も概ね予想通りといったところ。アマ戦の場合は1トライしかないため、1つのミスが致命的にもなりかねない状況の中、結果を差してくるところはアマチュアながら場数を踏んでいる証拠といえる。






ブッチギリのトップ通過となった長谷川絢之介。オーリーボディーバリアル




多くの人がリザルト掲示板を覗くおなじみの光景


続いての決勝は、今回も接戦となった。昨年の主要メンバーの多くが軒並みプロに昇格したため、今年のアマ戦に関しては世代交代の波が一気に押し寄せ、過渡期もといえるシーズンであるだけに、予想が難しいという特徴も併せ持つ。

現に予選をブッチギリのスコアで通過した長谷川絢之介は、決勝のためにとっておいたB/S270ノードスライドの270アウトを抑えきれず。最終的には7位に沈むという結果に終わってしまった。その反面新たな伏兵も飛び出してはきたが、最終的に優勝を争ったのは中野虎大郎と齋藤丈太郎の2名。今回も前回のうみかぜ公園に続き、どちらが勝っても念願の初優勝というシチュエーションだったが、最終的には圧倒的な高さのぶっ飛びバックサイドグラブやトレフリップを見せた中野虎大郎が2本目のランで齋藤丈太郎をわずかにかわし、優勝という結果になった。

そして女子は予選結果がそのまま順位になるのだが、ここでは男子とは対照的にうみかぜ公園に続いて松田優衣が2連勝。女子では唯一ハンドレールをメイクしていただけでなく、飛び出しバンクではバリアルヒールもメイク。完成度やスタイルは誰が見ても文句無しのNo.1。まだ中学1年生と若く、スキルもルックスも急成長中なだけに、数年後には全国や世界の舞台で活躍していてもなんらおかしくない。



女子では頭一つ抜けたスキルとスタイル。松田優衣のB/Sボードスライド




8位は村上涼夏。十八番トリックのノーリーバリアルヒール



7位の長谷川絢之介。惜しくもメイクならずだったB/S270ボードスライド270アウト



6位の戸谷陽日はスピーディーにF/S 5-0グラインドをメイク



今回も安定した滑りで5位に食い込んだ加瀬悠月の全流しB/Sクルックドグラインド



今回に限っては彼が伏兵か!? ルーティーンの最後でこのステアも攻略して4位に入賞した齋藤吟平



安定感あるライディングで3位に輝いた金澤憧歩の当て込み5-0




惜しくも2位となった齋藤丈太郎。セクション間が短いバンクtoバンクでもパーフェクトなB/Sキックフリップ






念願の初優勝は中野虎大郎。前足にデッキが吸い付いているかのようなトレフリップに、圧倒的な高さのバックサイドグラブ。どちらもかなりの完成度






このように第1戦、第2戦とも表彰台の顔ぶれが全く違うライダーとなった今年の関東アマチュアサーキット。開幕前の予想とおり、今年は世代交代の過渡期にあたるのだろう。

次戦の開催はまだ決定はしていないが、昨年に続き新横浜のスケートパークか、ムラサキパーク東京のどちらかになる予定だ。どちらにしろ予想が難しい白熱した接戦が繰り広げられるに違いない。

全日本アマチュア選手権出場をかけた最終戦の結果やいかに!?
一夏を越したライダーたちの成長を見るのが今から楽しみでならない。




優勝決定の瞬間。満面の笑みを浮かべる中野虎大郎




笑いあれば涙あり。決勝で狙ったトリックが決まらなかった長谷川絢之介。次回のリベンジに期待



今回入賞したライダー達



女子のトップ3



男子のトップ3






Photo & Text By 吉田佳央 (yoshioyoshida.net













平成最後のAJSA関東アマチュアサーキット



会場となったうみかぜ公園


春うららの4月を迎え、いよいよスケートボードシーズンも開幕。

今年は東京オリンピックを前年に控えていることもあり、JRSFとの共催でプロ戦は2月末に初戦を行ったが、
アマチュアサーキットは例年通りの4月開幕。中でも関東サーキットは全国の先陣を切っての開催となった。


会場は昨年リニューアルされたうみかぜ公園。このパークは20年以上毎年AJSAのコンテストを開催している全国で唯一のパークだ。




今年も新たな顔ぶれを含め100名近くがエントリー


ジャッジ陣はいつもの顔ぶれに加え、九州から清水潤ジャッジが参加



MCは関東アマではおなじみの関口氏





今年のエントリーは90名でそのうちレディースが7名という構成。
ここ数年の関東サーキットシーンを引っ張ってきた鎧碧斗、池田大輝、飯田葉澄、柴崎太陽といった面々が揃ってプロ昇格を果たしたため、この開幕戦は新たなスター候補の発掘という意味でも注目のコンテストとなった。




成長著しい渡邉賢太郎のF/Sブラントスライド




鈴木琉佳のB/S360 ノーズグラブ




アールからバンクへのキャスパーフリップトランスファー





予選は60秒の1トライ。プロ戦の場合は2トライになるが、
アマサーキットは出場人数も多いため、毎回一発勝負となる。
顔ぶれもコンテスト自体に初出場の人もいれば、本気でプロ昇格を狙う人まで様々。
新シーズンとなる急激な成長を見せるライダーもいるため、そういったところも楽しみな要素。
それでも昨年までに決勝に残ったことがあるような経験豊富なライダーは
きっちりとメイクを重ね、概ね順当な結果となった。







昨年も決勝進出の常連で優勝候補筆頭と目された澤田莉旺は10位。ピッタピタのハードフリップ




9位の斎藤丈太郎によるキックフリップF/Sボードスライド




8位の戸田 陽日はB/Sテールスライドをあっさりメイク




7位は小林 空。ここでトレフリップをメイクしたのは彼だけ。




この日も体格を生かしたダイナミックな滑りを披露。6位の大場蓮によるB/Sキックフリップインディー。




今年のFLAKEチームの顔。5位松本浬璃のB/Sスミスグラインド




4位の松本涼夏はノーリーバリアルヒール ロック トランスファーを披露




3位は内山朝陽。テールを下げたグラインドという珍しいトリックチョイス




惜しくも準優勝の加瀬悠月はF/S180ノーズグラインドでキンクも流しきった




念願の初優勝を飾った長谷川絢之介。バックサイドシュガーケーングラインド




スパインからのオーリートランスファー




レディースはぶっちぎりの滑りで松田優衣が優勝






決勝は60秒の2トライ。昨年の決勝常連組に新たな顔ぶれを交えた中での戦いとなったが、
優勝したのは長谷川絢之介。アマ戦では常連で安定した滑りを見せる加瀬悠月を抑えて栄冠を勝ち取った。TIZZからの優勝はオーナーの池之上慶太以来の出来事で、彼にとっては念願の初優勝となった。
また昨年から優勝を争いを繰り広げ、今年は優勝候補の筆頭とみられていた澤田莉旺は、
肝心なところで決めきれず10位に終わったが、ライディングスタイルはポテンシャルの高さを
十分に感じるものだったことは加筆しておきたい。

そして女子の方はと言うと、こちらもアマ戦ではおなじみのライダーとなった松田優衣がぶっちぎりの内容で優勝。彼女も今年から晴れて中学生となり、スキルもルックスも急成長中。今後が楽しみなガールズスケーターであることは間違いない。

次戦は埼玉にある日本屈指の屋内スケートパークのSKIP FACTORY。次戦の熱い戦いに乞うご期待。




念願の初優勝の瞬間






男女ぞれぞれの表彰台に上がった面々




最後は景品をかけたじゃんけん大会で大盛り上がり!



Photo & Text By 吉田佳央 (yoshioyoshida.net